現在、民間企業の設備投資の約5%がリースで行われています。
わが国の経済発展とともに成長した「リース」。
ご一緒にリースの歴史を辿ってみましょう。
目次
リースという言葉の起源
リースという言葉は、賃貸借する、あるいは、賃貸借契約を意味する英語(Lease)で、この概念は古代ローマ帝国時代にまで遡ることができます。
●地中海貿易における船の賃貸
古代ローマ時代に、地中海貿易に従事する商人に対して、船主が船を貸し出す行為がリースとして行われていました。
●ローマ法における土地や建物の賃貸
ローマ法の中で、土地や建物を他人に一定期間貸し出すという概念が認められており、これもリースの起源の一つとして考えられています。
●常緑樹の枝を輪にしたリース
一方、古代ギリシャ・ローマ時代に、常緑樹の枝を輪にして飾り幸せを願う習慣があったという説もあります。
古代
当時の地中海貿易で、船主が商人に対して船を貸し出したり、土地や建物の所有者が一定期間、他人に使用を許す賃貸借の概念が、リースの原点の一つとして考えられています。
賃貸借の歴史は、農耕地の使用をめぐって発展したと考えられ、貸主側からみると、土地を手放すことなく他人に使用させ、それによって経済的な報酬を獲得する方法であり、また貸主側も、一時的に土地の使用権を獲得する方法として意義づけていました。
●古代ギリシャ・ローマ時代には、動産や不動産の賃貸借契約が認められていました。
●ハムラビ法典(紀元前1750年頃)でも、動産のリースが存在することが確認されています。
●古代エジプトでも、動産や不動産のリース契約の記録があります。
●フェニキア時代には、船舶傭船(チャーター)が存在し、現代の船舶リースに繋がっています。
動産や不動産の賃貸借契約として活用していたようです。
近代
リース発祥の地はアメリカ
1952年にはじめてのリース会社であるUSリーシング社が設立されました。
企業が設備を所有することなく利用できる「リース」という新しい仕組みが生まれ、急速に広まりました。
同社はリースビジネスの成長の核となり、多くの他企業がこれに倣って業界全体が拡大した結果、リース業界は金融業界の一部としての地位を確立していきました。
リース業界はアメリカの経済発展において欠かせない存在となり、他国への普及にも大きな影響を与えたのです。
日本
1963年に最初のリース会社が設立されました。
この会社の社史によると、第一号のリース契約は、同年に山梨県のクリーニング会社との間で締結したドライクリーニング設備一式(契約期間4年、契約金額1,200万円)という記録が残っています。当時はアメリカのリースををそのまま日本に導入することができず、先達たちが知恵を絞りながら日本に合わせた取引形態を築いていき、わが国の経済発展とともに、金融機関、商社、メーカーなどが相次いでリース会社を設立しました。
一方、わが国の経済は、1973年の第一次オイルショックを契機に低成長期を迎えましたが、リースの市場は拡大を続けました。また、1970年代は、国税庁からリース税務通達が出され、リースの税務上の取り扱いが明確になったほか、リース信用保険制度、リース助成制度が創設されるなど、リース産業の基盤が整備されました。
1980年代においては、リースは設備調達手段としてわが国経済に確立し、80年代半ばからのバブル景気のなか、リース取扱高は、1991年度に過去最大の8兆8,000億円にまで拡大しました。
しかしながら、バブルの崩壊により、リ-ス産業は1992年度にはじめてのマイナス成長を記録しました。
現代
高度経済成長期に設備投資の資金調達手段として注目され、2000年代前半、リース需要は安定的に推移しましたが、2000年代後半以降に減少しました。現在は回復傾向を示し、企業の利用率が約9割に達しています。
わが国リース産業は国外への進出、リース以外の事業展開、キメ細やかにリース取引先を開拓し、リース産業全体としては安定した成長を続けており、市場規模は約8兆円に達しています。
特に企業の設備投資需要やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進、環境対応型リースへの関心の高まりが成長を後押しています。
世界のリース市場
アメリカのリース市場がもっとも大きく、市場規模で4,730億ドル(日本円1ドル=150円で換算すると約71兆円)、リース比率は22.0%です。2番目・3番目・4番目のリース大国は中国(3,415億ドル)、イギリス(920億ドル)、ドイツ(904億ドル)となり、我が国を抜いています。わが国は、世界で5番目(648億ドル)となります。
次いでフランス(596億ドル)、イタリア(344億ドル)の市場規模が大きいです。
ここ数年、中国のリース市場は急速な拡大を続けています。
また、アメリカのリース市場は拡大を続けています。
グローバルな展開
わが国のリース会社は、アジア地域を中心にグローバルなビジネス展開をしています。現地に進出した日系企業だけでなく、地場企業の設備投資の支援や航空機リースを行っています。
東南アジアは近年急成長している市場の一つで、この地域は経済成長が著しいだけでなく中小企業の設備投資需要が高いことから、リース業界にとって大きな可能性を秘めた市場といえます。
航空機リース
航空機リースは近年特に注目を集めている分野です。
航空業界全体が抱える莫大なコスト負担を分散させる役割を果たしていること、リース業界のビジネスモデルが航空会社の経営安定化に貢献していることなどが、主な理由です。
新型コロナウイルスのパンデミック後、2023年以降旅客需要が急速に回復し、需要の急増に対応するため、航空機リースの利用が増加しました。
技術革新と持続可能性の追求ー電気航空機やハイブリッド航空機の開発などーが、今後の市場成長のカギとなるでしょう。
成長分野への特化
リース業界の海外展開において、新エネルギーやDX(デジタルトランスフォーメーション)関連分野への特化が大きなトレンドとなっています。太陽光発電設備や電気自動車といった新エネルギー分野へのリースの需要拡大、また、情報通信機器やデータセンター設備のリースに注力することで、DXを進める企業を後押しする動きも活発化しています。
※「DX」とはデジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略です。「DT」ではなく「DX」と表記されるのは、英語圏では交差するという意味を持つ「trans」を「X」と略すことがあるためと言われています。
企業がAI、loT、ビッグデータなどのデジタル技術を用いて、企業フローの改善や新たなビジネスモデルの創出だけでなく、レガシーシステムからの脱却や企業風土の変革を実現させることを意味します。
DX推進はあらゆる企業にとって、デジタル技術を社会に浸透させて人々の生活をより良いものへと変革できるよう、変化の激しい時代のなかで市場における競争優位性を維持し続けるための重要なテーマです。
※loT…「モノのインターネット」のことで、家電や自動車などのモノをインターネットに接続する技術、様々なモノがインターネットに接続されて情報交換をする仕組みのこと。
※ビッグデータ…大量かつ複雑なデータセットを指し、従来のデータ管理ツールでは効率的に処理できないものを言います。
参考:加藤健治「最新リース取引の基本と仕組みがよ~くわかる本[第10版]」,株式会社秀和システム,2024年9月,164ページ
まとめ
リースの歴史は、古代ローマ帝国時代にまで遡ることができるのですね!
リース業界は、時代の変化とともにその役割や形態を変えながら、経済活動を支え続けてきました。
今後、環境配慮型リースやサブスクリプション型リースなど、新たなビジネスモデルの導入やDXの進展による業務効率化、持続可能な発展を視野に入れた革新が必要です。